建設アスベスト訴訟最高裁判決と全面的な被害救済に向けて
1 判決の概要
さる5月17日、最高裁第一小法廷は、神奈川第1陣、東京第1陣、京都1陣、大阪1陣訴訟の4つの建設アスベスト訴訟において、判決を言い渡しました。判決は、国の責任について、労働者のみならず一人親方に対する関係でも、昭和50年から平成16年までの間、石綿肺、肺がん、中皮腫等に罹患しないように適切な規制を行わなかったことが違法であること、建材メーカーの責任について、石綿による重篤な疾患が発症する危険性を表示する義務を怠ったこと、高いシェアを有するメーカーらが共同不法行為責任を負うと判断しました。
2 判決の意義と問題点
今回の最高裁判決は、30年にわたる長期間の国の責任を認めたこと、労働者のみならず一人親方に対しても国の責任を認めたこと、建材メーカーの共同不法行為責任を認めたことなど、画期的なものであり、建設作業従者の被害救済を大きく前進させるものとして高く評価できます。もっとも、最高裁が、屋外の作業者について、国の責任、建材メーカーの責任をともに否定した点は、作業実態を無視し、被害者救済を分断するものであり、不当です。
3 国との統一和解と新たな立法
建設アスベスト訴訟は、2008年に東京地裁で提訴されて以来、全国6箇所で提訴され、原告の総数は、被害者単位で900名を超えています。うち7割がすでに亡くなっており、一日も早い解決が求められます。また、わが国には、1000万トンともいわれる大量のアスベストが輸入され、その7割が建設現場で使われました。アスベスト関連疾患による労災認定者は、これまで約1万8000人に及び、建設業がその半数を占め、今後も、毎年500~600人ずつ認定されると言われています。
全国弁護団と国は、最高裁判決の日に、全国で係属中の訴訟(2陣、3陣訴訟)は和解による解決をすること、未提訴者については裁判をせずに行政手続きによる給付金(最高額1300万円)を支給する立法をするという基本合意書を締結し、菅総理が被害者代表に謝罪しました。法律(「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」)は6月9日成立し、来年4月1日から施行されます。一方、建材メーカーは、係属中の訴訟の和解や国の補償制度に参加することに消極的な姿勢を崩していません。
今後、私たち原告団、弁護団は、係属中の訴訟については、一日も早く国との和解を成立させること、建材メーカーにも和解による解決を求め続けること、今後も発生し続ける被害者に対しては、国の給付金支給手続きや建材メーカーへ提訴など救済を進めます。そして、国だけでなく企業も参加した基金制度を創設することに全力を尽くします。そのためには、まだまだ国民世論の後押しが必要です。今後とも、皆様方のご支援をよろしくお願いいたします。