「アベノマスク」2つの情報公開訴訟
2021.08.18
谷真介
■マスク配布に多額の税金
新型コロナが一気に拡大し始めた2020年4月1日の政府対策本部で、突如当時の安倍首相が世のマスク不足に対応すると言い、学校や介護施設、そして全世帯に政府が2枚ずつ布マスクを配布すると発表しました。投入された税金は、なんと約500億円。
瞬く間に世間では「税金の無駄使い」、「エイプリルフールの冗談では」との声が相次ぎ、その不格好さから「アベノマスク」と揶揄されました。その後、届いたマスクに虫の混入やカビが生えているとして回収騒ぎが起き、マスクが店頭で容易に入手できるようになってもいまだ送られてこない等、混乱が続きました。加えて、政府は受注企業の一部を明らかにせず、世間で大騒ぎとなってようやく明らかにされたのは、「株式会社ユーズビオ」という、設立後わずか3年も経たない実体不明の会社でした。
■「黒塗り」「不存在」隠される真実
怪しげな受注企業が判明したことから、「政治とカネ」を追及してきた神戸学院大学の上脇博之教授が、厚労省と文科省にマスク発注に関する文書の情報公開請求をしました。結果、見積書や契約書は開示されたものの、①マスク1枚の「単価」は開示すると企業のノウハウが侵害される等として一部不開示(黒塗り)。②受注業者の選定や交渉・発注経過について業者とのやりとりを記載した文書はなんと「不存在」。
①については「たかが布マスクの価格に企業のノウハウなどありえない」と、②については「500億円もの税金を支出した巨大事業で業者とのやりとりを記録した文書が全くないなんてありえない」と、2つの情報公開裁判を大阪地裁でたたかっています。安倍政権の「負の遺産」を問うアベノマスク裁判、ぜひご注目ください。