【6】なんとかわゆい「ニコニコ埴輪」 ~楯持人埴輪(たてもちびとはにわ)~
2011.02.26
徳井義幸
この写真の埴輪、まるでニコニコ笑っているような。
こんなかわゆい埴輪に出会える機会を逃すなと行ってきました国史跡茅原大墓古墳(ちはらおおはか古墳)現地説明会。
あの箸墓古墳からJR桜井線をはさんで南西約500メートル程、三輪駅から歩いて約15分程のところにあります。
この古墳の形は「ホタテ貝式古墳」と呼ばれるもので、前方後円墳の前方部が短い台形状なのが特徴です。
被葬者が誰なのか特定されていませんが、4世紀後半の築造で、大きな前方後円墳が、現在の応神・仁徳陵の如く河内へ移動する過渡期のもので、衰退過程にあった地元の首長のものらしい。古墳の形状が「ホタテ貝式」であることや墳丘の全長も約86メートルと小振りであることも、河内方面の首長による規制を受けた結果かもしれないと言われているようです。
桜井市はこの古墳を史跡公園化する計画を持っており、そのための現地調査が実施されてきていたのですが、今回墳丘の東側のくびれ部分付近から破片化した埴輪が発見され、それを復元してみるとなんと「ニコニコ埴輪」だったわけです。
この「ニコニコ埴輪」は、楯持人との名称からわかるように当時の武人を象形化したもので、聖なる古墳に邪悪が接近するのを防ぐ防衛隊員の役割をしていたとのことです。これまでにもこの楯持人埴輪が古墳から出土していますが、いずれも5世紀後半以降のものであったとのことで、今回の「ニコニコ埴輪」はその出現を100年ほど早めたことになります。顔面の頬の部分が赤みを帯びていますが、これは赤色の顔料を塗っていた痕跡です。
それにしてもこのニコニコ顔で「邪悪」の接近を追い払うとは、古代のおおらかさを象徴するような埴輪に思えてなりません。