解決事例報告

首の打撲で簡単な視診。後日死亡し、病院相手に訴訟

2009.01.27 鎌田幸夫

女性が仕事場で、荷物搬送用のエレベーターで上下に首を挟まれ、首が腫れたため、事故日に近所の病院で診察を受けたところ、担当医師は軽度の頸部腫張と判断し、レントゲンやCTをとらず、翌日の診察でも簡単な視診だけで特段の措置をしませんでした。

ところが、事故から4日後、女性が昼休みに会社の食堂の肩あんま機で肩から首をマッサージしていた最中、急に首が腫れてきて呼吸困難となり、病院に搬送されましたが、間もなく死亡したという事案です。 

夫は、職場でのエレベーター事故が原因であるとして労災申請をしたところ労災認定され、また、会社からも一定の賠償をもらっていましたが、2度にわって診察した医師が精密検査をしていてくれれば、異常が発見され、妻は助かったのでないかという思いが強くもっておられました。

そこで、首という枢要部分の事故なのだから、医者としてもレントゲン、CTなどを撮影しておくべきであり、そうしておれば異常は発見でき、死の結果は回避できたはずであるとして、病院のカルテの証拠保全をし、病院相手に裁判を提訴しました。

裁判では、エレベーター事故と死亡との間の因果関係と医者が初診時に重大な結果を生じることを予見することができたか否かが、最大の争点でした。

医学鑑定では、事故と死亡との因果関係について、エレベーター事故により首の血管の壁が傷ついており、それがあんま機の使用のショックで破裂したものであると判断され、最終的には、裁判所の勧告による和解が成立しました。

医療過誤は難しい事案が多いですが、諦めずに協力してもらえる医師を探す等して、トライすることが大切です。