生活費や母の医療費で借金、自己破産。「水際作戦」により生活保護の申請をさせないのは違法
2011.10.14
中村里香
Aさんは、生活費や母の医療費のためにカードローンなどの借金がかさみ、自己破産をしたいと言って相談に来られました。
債務超過に至った経緯を詳細に聴取していく中で、収入について尋ねると、収入はご自身と、同居しているお母さんそれぞれの年金のみであり、その額は合計しても、とても2人分の生活費に足りる額ではありませんでした。
また、同居しているお母さんが重篤な病気を抱えて入退院を繰り返しており、目を離すと危険なため、日々の看護が必要であることや、定期的な通院への付添いが必要なこと、親族に母の扶養を申し入れたものの、既に断られたことがあることなども分かりました。
このような現状では、Aさんが就労によってAさんとお母さんが暮らしていくために十分な収入を得ることは、事実上不可能です。
そこで生活保護の受給を検討されたことはありませんかと尋ねると、実は既に市役所に相談に行ったことがあるが、年金受給を受給していることなどを理由に、申請を受け付けてもらえなかったことが分かりました。
しかし年金を受けていても、最低生活費に満たないのですから、年金受給を理由に申請をさせないとする運用は違法です。
私が検討したところ、Aさんとお母さんは、生活保護の受給要件を充たしていることが明らかでしたので、私が申請書を作成しAさんに同行して、市役所で申請の手続を行いました。
その結果、Aさんとお母さんは、最低生活費と年金の差額分について、生活保護を受給することができるようになりました。
このように自己破産に先立ち、破産後の生活の目途をきちんとしておくこと、,弁護士の役割として大切ではないかと思います。