「命を、守る。真夜中の労働ホットライン」を実施しました
痛ましい電通過労自死事件を受け,2016年11月4日,東京・大阪の2か所で,午後9時から翌深夜2時まで,ブラック企業被害対策弁護団の主催(大阪は同弁護団と民主法律協会の共催)で「命を救う真夜中の労働ホットライン」を実施しました。大阪の相談担当者として,当事務所から中西弁護士,安原弁護士と私が参加しました。
同ホットラインは,電通事件のあまりの衝撃から事前に多数のマスコミから取り上げられ,その影響で,深夜まで鳴り止まないほどの相談の電話がありました。相談内容もほとんどが長時間労働やそれに伴う残業代未払いでした。しかも過労死ライン(時間外労働が月80時間)を超えると思われる相談が半数近くで,中には同130時間とか140時間など,いつ過労死してもおかしくない労働者からの相談もありました。年代は若者から壮年者まで幅広く,労働者本人ではなく家族から「夫(息子)が働き過ぎで心配」,「身体を壊す前に仕事を辞めて欲しいがそういうと本人が怒るのでどうしたらよいか」等の相談も多くありました。わずか5時間のホットラインでしたが,大阪だけで38件もの相談が寄せられました。
長時間労働は,過労死や過労自死,精神疾患の発症等,生命・健康を脅かす深刻な災害の根源となるばかりか,家族や恋人と過ごしたり,趣味や生きがい等,労働者が家族的・文化的・社会的な生活を営むための生活時間を奪うという側面でも問題です。そのために労働基準法では1日8時間,週40時間という労働時間の定めがありますが,いわゆる36協定が十分に機能しておらず,例外であるはずの時間外労働がむしろ普通になってしまっています。そればかりかサービス残業が横行し,間接的規制のはずの残業代(割増賃金)すら支払われていない状況です。
いま政府は「働き方改革」などと言い出していますが,一方で政府は昨年来「残業代ゼロ法案」(労基法「改正」案)を国会に提出しており(継続審議),労働者のために「働き方改革」を打ち出しているとは思えません。労働者が働きやすい社会をつくる真の「働き方改革」を実現するため,労働時間それ自体を厳しく規制し,さらにインターバル規制(休息時間の確保)等も行うことが必要です。