テロ対策に「共謀罪」は必要ない!?
政府は共謀罪(2人以上が犯罪の計画をして、何らかの準備行為をした場合、それだけで処罰する)について、「テロ防止のために必要である」または「テロを防止するためのTOC条約を批准するために共謀罪を作る必要がある」と説明しています。しかし、共謀罪はテロ防止とは関係がありません。
1 テロ防止のために共謀罪は必要か
政府は国会で「テロ組織が殺傷能力の高い化学薬品を製造し、これを用いて同時多発的に一般市民の大量殺人を行うことを計画し、殺傷能力の高い化学薬品の原料の一部を入手した場合、現在の法律では対処できない」と説明しています。しかし、この事案は、殺人罪の予備行為として、現在の刑法で処罰が可能です。
また、政府は、ハイジャック目的の搭乗券購入予約行為についても処罰できないかのように説明していますが、この点もすでに存在するハイジャック処罰法で処罰可能です。
このように、現在の日本の法律で、テロを処罰することは十分に可能です。では、テロ防止のための条約は十分といえるでしょうか。
これまで外務省のホームページでは「国連その他の国際機関では、これまでに13本のテロ防止関連書条約が作成され、我が国は、2015年8月現在、下記の13条約の締結を完了しました。」と記載されていましたが、2017年1月27日にこの記載は抹消されました。外務省自身が、テロ対策に必要な条約を全て締結していると説明していたのです。
2 TOC条約批准のために共謀罪の創設が必要か
政府が言う条約は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(略称「国連越境組織犯罪防止条約」「パレルモ条約」「TOC条約」)のことですが、これはそもそもマフィア対策の条約で、経済的利益を追求する国際的な組織犯罪を防止することを目的としています。したがって、そもそもテロ対策を目的とはしていません。
また、当初政府は「TOC条約を締結するために600以上の犯罪について共謀罪を創設することが必要」と明言してきましたが、今国会でその主張を修正し、対象犯罪を大幅に削減することができると説明しました。政府の説明のいい加減さが明らかになりました。現在TOC条約に加盟している187カ国・地域のすべてに日本が法整備をめざす水準の「共謀罪」があるのか、政府は説明していません。日本はすでにテロ防止のための13本の国際条約を締結し、57の主要重大犯罪について未遂より前の段階で処罰できる国内法をもっているのですから、共謀罪がなくてもTOC条約には加盟できるはずです。
結局のところ、今回提案されている共謀罪も、これまで3度にわたって廃案になってきた共謀罪と同様に、言論の自由や思想良心の自由を侵害するものであることに変わりはありません。政府がその場しのぎのこじつけの説明をしても、説得的な説明になるはずがありません。今回もこれまで同様、廃案となるべき法案なのです。