地震や台風など自然災害による損害について<第1報>
6月18日の大阪北部地震、9月4日の台風21号など、自然災害がつづいています。被災された皆様にはお見舞い申し上げます。
さて、地震や台風によって、ご自宅や自動車などに損害を受けられた方や、水漏れや瓦などの飛散によって周囲に損害を与えてしまった方もおられるかと思います。法的ポイントを整理しましたので参考になさってください。
<自然災害によって直接に被害を受けた場合>
地震で自宅の壁が崩れた場合とか、台風で屋根瓦が飛んでしまった場合など、自然災害によって直接に被害を受けた場合の補償
①住宅保険・火災保険・地震保険による損害の補填
②被災者生活再建支援法による支援金
③自治体による支援金
①住宅保険、火災保険、地震保険
台風による被害(風災)については、通常の住宅保険や火災保険でカバーされています。
住宅保険や火災保険に加入されている方は、被災状況を写真などで記録したうえで、保険会社にお問い合わせください。
地震・噴火・津波による被害については、通常の住宅保険や火災保険では、カバーされません(地震免責)。
あらかじめ地震特約・地震保険に加入していた場合にのみ、保険金が支払われます。
②被災者生活再建支援法
6月18日の大阪北部地震については、被災者生活再建支援法が適用されていません。
9月4日の台風21号については、まだ未定です。
仮に、被災者生活再建支援法が適用されることになれば、住宅の被害の程度に応じて、50万円から最大300万円の支援金が支給されます。
③自治体による支援金など
その他、お住まいの自治体によっては独自の支援金などを設けている場合があります。詳しくは各自治体に直接お問い合わせください。
<自然災害によって、他人に被害を与えた場合、または、他人から被害を受けた場合>
地震で瓦が落ちてお隣に被害を与えてしまった場合や、台風で屋根が飛んでしまって近所に迷惑をかけてしまった場合については、どのような責任があるのでしょうか。
反対に、他人から被害を受けた場合には、どのようにすればよいでしょうか。
①住宅保険、火災保険の活用
②個人賠償責任保険の活用
③「土地工作物の瑕疵」に基づく損害賠償(民法717条)
①住宅保険、火災保険
被害を受けた方が、住宅保険や火災保険に加入しておれば、その保険から補償を受けられる可能性があります。
地震の場合には、通常の住宅保険や火災保険では、被害がカバーされません(地震免責条項)が、地震特約に加入していた場合には、被害の補償を受けることが可能です。
台風の場合には、通常の住宅保険や火災保険で被害がカバーされている場合が多いので、補償が受けられる可能性が高いです。
加入されている保険の内容によって補償を受けることができるかどうかが変わりますので、詳しくは、保険会社に問い合わせるか、保険証券や保険契約約款を持参のうえご相談ください。
②個人賠償責任保険
他人に損害を与えてしまった場合に活用できる保険です。
住宅保険や火災保険、自動車保険などに特約として付されている場合があります。
損害賠償の責任を負う方が、被害者に対して、損害賠償をした場合に、その分を保険会社から補填を受けられます。
ただし、多くの保険会社は、地震による場合には、保険金を支払わないという地震免責条項を設けています。詳しくは、保険会社にお問い合わせいただくか、保険証券と保険契約約款をご持参のうえご相談ください。
③土地工作物の瑕疵に基づく損害賠償(民法717条)
土地工作物(建物など)が、本来備えておくべき安全性を備えていなかったために、他人に損害を与えてしまった場合には、土地工作物(建物など)の所有者は、その損害を賠償する責任を負います。
例えば、以前から建物の屋根がはがれかかっていたのにそのまま放置していたため、台風で飛んでしまって、他人に被害を与えた場合には、建物の所有者は賠償責任を負います。
他方で、本来の安全性は確保されていたのに、通常の想定を超えるような大規模災害のために、瓦などが飛んでしまった場合には、責任を負いません。
本来の安全性が備わっていなかった(=瑕疵があった)かどうか、によって責任の有無が判断されます。
どこから飛んできた物か分からない場合や、何によって被害を受けたのか分からない(飛んできた瓦が当たったのか、倒れてきた木が当たったのか分からない)場合には、まずは、何によって被害を受けたのかを特定する必要があります。次に、被害をもたらした物の所有者において、上記の「瑕疵」(=本来の安全性を欠いていた)が認められれば、その所有者に対して、賠償を求めることができます。
いずれにせよ、まずは、現場の状況を詳しく写真に撮っておいてください。