求人広告をめぐるトラブルが多発しています
電話やFAXで「◯日間は無料で掲載します」などと、求人広告サイトへの求人情報の掲載を勧誘し、
無料期間(20日とか3週間とか)が過ぎたあとになって、掲載料金を請求されるというトラブルが相次いでいます。
サイト業者側の主張は、「確認書には『書面で解約しない限り自動更新される』と書いてある」というものです。
勧誘する際には「無料です!」と強調ばかりしておいて、後から送ってくる確認書に、小さな文字で、自動更新なんて書いていあったからといって、
それで契約が成立しているとは認められないと思われますし、錯誤(民法95条)や詐欺(民法96条)を理由として契約は無効ないし取り消すことも十分に可能と思われます。
しかも、申込書には、
「確認書●条●項所定の方法による解約申入れがない限り有料契約に移行します」
と書かれています。
一方、申込書とは別の書面である「確認書」を見ると、●条●項には、
「本契約終了日の◯日以上前に書面での申出がない限り、乙が選択したプランの期間を1単位期間ごとに更新し、以後も同様とする。」
と書かれています。
申込書と確認書を照らし合わせて確認しないと、解約方法が分からない仕組みです。
また、「終了日の◯日以上前」までに「書面」で解約を申し出なければならないと書かれていますが、電話ではそんな説明はまったくありません。
業者によっては、「あとで解約の書類を送りますから」と言っておきながら、その書類(しかもそれが解約書類だとは一見してわからないような体裁)が送られてくるのが1週間後で、解約の申出は7日前までにしなければならない、としているようなひどい業者もあります。
そもそも、無料お試し期間という手法は、自社の提供するサービスが良いものであることを顧客に訴求するためのものであるはずです。
自社の提供するサービスに自信があるのなら、お試し期間が満了した後に、あらためて正式に顧客に対して、契約締結を提案すればよいはずです。
そうせずに、無料お試し期間が経過した後になってから、自動更新だから料金を払えとか、払わなければ訴えるぞなどと凄んだりするのは、
詐欺商法の疑いが強いのではないでしょうか。
うっかり業者の言いなりに料金を支払ってしまう前に、まずは弁護士にご相談ください。
当事務所では、zoomでのご相談もお受けしています。
ご相談の申込みは、こちらから。
弁護士が受任して内容証明郵便を発送する場合、
手数料50,000円(消費税別途)と実費5,000円をいただいています。
詳しくは、担当弁護士にご相談ください。
<追記2019.5.14>
1)公益社団法人全国求人情報協会が注意喚起をしています↓
無料掲載を謳い、後で請求を行う求人広告の契約にはご注意ください
2)厚生労働省も注意喚起をしています↓
サイト業者側は、ハローワークに求人を出した企業に対して営業をかけてくることが多いようです。
厚生労働省も注意喚起しています。
3)マスコミでも取り上げられ始めています↓
2019.4.24 信濃毎日 求人サイト高額請求相次ぐ 「無料で広告」→自動で有料に
2019.4.29 東京新聞 ネット求人 「無料」の誘惑 広告掲載後に高額請求 全国の中小でトラブル
2019.6.7 西日本新聞 求人サイト無料掲載トラブル 「解約必要」目立たぬ記載
2019.6.11 毎日新聞 求人サイトトラブル数百件 無料と勧誘、後日高額請求 氷山の一角か
2019.6.12 毎日新聞 求人広告サイトが掲載数水増しか ハローワークなどから無断転載疑い
2019.6.13 毎日新聞 求人広告トラブル「救済」 全国で弁護士らが相談窓口
2019.7.15 京都新聞 無料掲載のはずが…ネット求人広告サイト、トラブル多発
4)各地の弁護士会でも取組みが始まっています
2019.4.15 鳥取県弁護士会「インターネット求人広告の掲載料をめぐるトラブルについて注意を求める会長声明」
2019.6.12 沖縄弁護士会「無料求人広告トラブルについて注意を求める会長談話」
5)日弁連
ひまわりほっとダイヤルのページです。
<追記 2019.9.13>
中西基弁護士が毎日放送(MBS)から取材を受けました。
【特集】「詐欺では?」”無料”求人広告掲載のはずが…トラブル急増中!会社に迫る。<リンク切れ>
<追記 2019.12.18>
業者からの請求に対しては、弁護士にご依頼いただいて、支払いを拒絶する内容証明郵便を送付すれば、多くの業者は、それ以上は請求してこなくなります。
もっとも、一部の業者は、裁判を提訴してくるところもあるようです。
裁判を提訴されたとしても、弁護士がきちんと対応すれば、業者側から裁判を取り下げることも多いようです。
また、弁護士にご依頼いただいて請求が止まっていたところ、数カ月ぶりに、会社に直接にファックスで「和解書」を送りつけてくる業者もあります。
ファックスには
「弊社としましてもこれ以上、本件に関しまして長期化になることを望んでおりませんので、今回解決金として50,000円お支払いをお願いいたします」
などと記載されています。
「面倒だし、これくらいなら払ってしまって終わりにしよう」という気持ちに付け込むのが業者側の狙いかと思われます。
すでに弁護士にご依頼されている方は、うっかり支払ってしまわずに、ご依頼になっている弁護士に再度ご相談されることをおすすめいたします。
<追記 2021.11.11>
最近、ふたたび、求人広告トラブルのご相談が増えています。
求人サイト業者側の手口は基本的には変わっていません。
結局は、有料での求人広告掲載という契約が有効に成立しているのかどうか、の問題です。
申込者側の主張としては、次のようなものが考えられるでしょう。
①契約不成立
無料キャンペーンの申し込みはしたが、有料での契約は申し込んでいない。
②錯誤取消
有料契約を申し込むつもりはなかったし、業者側が作成した書面には小さく分かりにくい字で書かれていたので、そのつもりはなかったので、錯誤だ。
③詐欺取消
求人サイトは求人の効果はほとんど期待できないものである。業者側は、それをわかったうで、無料キャンペーンから自動的に有料に切り替えさせることを狙って、意図的に分かりにくい字で申し込みをさせており、だますつもりで契約させたので、詐欺だ。
④公序良俗違反
勧誘方法、申込書の体裁、費用体系、求人効果等を総合的に考慮すると、契約は公序良俗違反で無効だ。
いずれにせよ、契約が有効かどうかは、裁判で決着をつけるべきものです。
サイト業者側からの請求に納得できない場合には、支払を拒絶した上で、裁判で争えばよいでしょう。
なお、下記のサイトが参考になります。
文責:弁護士中西基