アスベストで健康被害。労災認定で病気との闘いに少しばかりのサポート
依頼者は,昭和30年代より約10年間,配管業を行う親族の元で配管工として働き,その際にアスベスト粉じんを浴びたことにより,現在になってびまん性胸膜肥厚という病気で呼吸困難となっている方でした。
アスベストの病気は何十年もの潜伏期間があるので,通常の労災申請に比べて特殊な問題が生じ得ます。
この依頼者の場合,問題となる点が2つありました。1つは相談者のびまん性胸膜肥厚という病気について,労災認定基準を満たしているかということ(医学要件の問題),もう1つは,依頼者が昭和30年代に配管工として働いていたことの証明ができるかということ(労働者性の問題・労災申請の前提として労働者であることが必要となります)でした。
前者の医学要件の問題については,弁護団で協力していただいている呼吸器専門の医師にレントゲンやCT,肺の機能を診ていただいたところ,労災基準を十分満たしているという診断でしたので,診断書を作成していただきました。
後者の労働者性の問題については,当時の同僚の証明がとれれば良かったのですが大昔のことでしたので誰一人として行方が知れず,困難を極めました。しかし,元請け企業へ照会を行ったり,当時依頼者と同居していた方に証明するための陳述書の作成を依頼することにより,何とか証明をすることができました。
申請から約半年かかりましたが,最大限できる証明活動を行ったことが実り,労災認定がおりました。そのことを依頼者に伝えた瞬間は,依頼者自身も認定は難しいと思っていたからか,とても驚き,喜ばれ,感謝されました。
労災認定がなされると,療養補償により医療費が無料になり,休業補償(当時の平均賃金の約8割)により生活費が賄われることとなります。アスベスト被害に苦しむ依頼者にとって,病気と闘う上での少しばかりのサポートができ,弁護士として非常にやりがいのある仕事になりました。