解決事例報告

保釈金を用意できず…被害弁償で早期に勾留から解放

2012.01.07 中村里香

暴行で現行犯逮捕され、その後、傷害及び器物損壊で送致された被疑者について、私が国選弁護人に選任されました。

被疑者が酩酊中の犯行で、記憶に一部あいまいな点があるものの、犯行の主要な点については自認していました。被疑者は,新しく仕事に就いたばかりであり、早期に身体拘束を解く必要がありました。

本件は、被疑者には前科前歴が一切なかったこともあり、仮に検察官に公判請求されたとしても、保釈が認められる可能性がある事案でした。保釈によって身体拘束を解くためには,保釈金を納入する必要があります。

しかし被疑者自身には、保釈金を用意できるだけの資力がなく、また親族とも連絡が途絶えていたため、保釈金を用意することは事実上できないと思われました。

保釈ができないとなると、執行猶予判決が出るとしても、判決が出るまでの間(本件であれば、公判請求から1か月半程度が見込まれます)勾留が続くことになってしまいます。

そこで本件では、とにかく公判請求をされないようにすることを目標に、弁護活動を行うこととしました。

中心となるのは、被害者の方に被害弁償を行うことです。

私が検察官に連絡を取り、被害者の方の意向を確認してもらい、被害者の方の勤務先にて謝罪と被害弁償を行いました。被害者の方からは、告訴の取下げまでは得られなかったものの、謝罪文と被害弁償については受領いただき、これ以上の請求は行わないという意思が表示されました。

私が、上記被害弁償等について報告書を作成し、検察官に報告したところ、結局、本件は略式起訴(罰金刑)とされ、被疑者は勾留満期日に釈放されました。

このように、弁護人が被疑者段階に採りうる手段を尽くすことで、被疑者を早期に身体拘束から解放できることがあります。本件は、初期段階から被害弁償を誠意をもって行ったことが結実した事案でした。