解決事例報告

父親が多額の債務を残して死亡。丁寧な相続放棄の手続きで後々の紛争を回避

2012.05.19 中村里香

Dさんは、父親(被相続人)が多額の債務を残して死亡したため、債務をどうすべきかということで相談に来られました。

持参された資料を拝見してお話を伺ったところ、被相続人の債務がきわめて多額であり,資産(積極財産)として見るべきものはほとんどなかったため、相続放棄の手続をすることとしました。

第1順位の相続人としては、被相続人の妻(Dさんの母親)と子(Dさん自身とその兄弟)がいましたが、全員が相続を放棄することとしました(※相続放棄は、相続人全員の足並みが揃わなくても行うことができます)。

第1順位の相続人が相続を放棄することによって、次順位の相続人である、被相続人のきょうだい(Dさんのおじ,おば)が被相続人の債務を相続することになります。また、被相続人のきょうだいが被相続人よりも先に死亡していた場合には,その子が代襲相続することとなります。

本件では、被相続人には多くのきょうだいがおり、既に亡くなっている方もいました。そこで、相続人として誰がいるのか、こちらで取り寄せた戸籍等から把握して、私とDさんから、被相続人の債務を相続してしまうこととなる方全員に対してその旨説明しました。

その結果、全員が相続を放棄して、本件は終了しました。次順位の相続人に対し、Dさんらが相続放棄をした場合には被相続人の債務を相続してしまうことを説明したことで、後々の紛争を回避することができました。

なお相続放棄は、相続の開始を知ってから3か月以内(第1順位の相続人が相続放棄をした結果として相続人になった場合には、そのことを知った日から3か月以内)にする必要があり、家庭裁判所への申述によって行います。

また、相続放棄をした場合、放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。