解決事例報告

被疑者を早期に身体拘束から解放

2011.12.21 中村里香

窃盗罪で現行犯逮捕され、警察署に勾留された被疑者について、私が国選弁護人に選任されました。

被疑事実は、病院の病室から人が出払った隙を見計らい、入院患者のものである、病院内の自動販売機で換金できるテレビカードを窃取したというものでした。

国選弁護人の任務の1つは、被疑者を早期に身体拘束から解放することです。

とはいえ、検察官の勾留請求に対する却下率は0.77%(平成20年度)と極めて低く、勾留決定に対する準抗告が認められる割合も、現状ではきわめて低い数字に留まっています。

本件の場合も、被疑者が一人暮らしであり身元引受人がいないこと、手口からして同種の犯行を過去にも行っていたことが疑われることなどから、罪証隠滅や逃亡のおそれが認められやすいとも思われ、準抗告によって勾留決定を覆すことは難しいかと考えられました。

しかし被疑者に前科がないこと、被害額が数100円と僅少であることなど、被疑者にとって有利な事情もあったことから、弁護人として勾留決定に対する準抗告を申し立てることにしました。

その結果、上記事情とともに被疑者が生活保護を受給しており、逃亡などをすれば生活保護の支給が断たれる可能性もあるため、そのようなリスクを冒してまで逃亡することは考え難いこと、現行犯であり証拠隠滅の可能性や実効性がきわめて乏しいことなどの事情が考慮され、検察官による勾留請求が却下されました。

これにより、被疑者を逮捕後数日という短期間で、身体拘束から解放することができました。なお、身体拘束が解かれた場合は国選弁護人は自動的に解任され,その後は在宅事件として捜査が継続することになります。