解決事例報告

子どもが学校における生徒会活動の負担等により自死した場合に、独立行政法人日本スポーツ振興センターに対して災害共済給付の請求が認められた事案

2024.11.21 西川翔大

1 事案の概要

高校の生徒会長であった生徒(高校2年生)が生徒会活動として学校の講演会の企画、準備、運営等の負担が集中し、うつ病を発症したのち自死した事件で、独立行政法人日本スポーツ振興センターの「災害共済給付制度」の死亡見舞金の請求が認められました。いじめや体罰等ではない事案で、死亡見舞金が認められるケースは異例ですので、災害共済給付制度を踏まえてご報告します。

 

2 対応方法と解決

 (1)災害共済給付制度による補償

独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「スポーツ振興センター」といいます。)の「災害共済給付制度」に加入している学校では、「学校の管理下によって生じた怪我や疾病」により治療が必要となった場合に、初診から治癒に至るまでの医療費総額が5000円以上(健康保険適用になる治療で、自己負担割合が3割の場合、窓口での支払いが1500円以上)であれば、補償の対象となります。

また、怪我や疾病により後遺障害が残った場合には,後遺障害の等級に沿って障害見舞金が給付されます。

さらに、不幸にも子どもが死亡した場合には「死亡見舞金」が給付されます。

詳しくは、下記URLをご参照ください。

https://www.jpnsport.go.jp/anzen/saigai/tabid/56/Default.aspx

 

(2)「学校の管理下」であること

「学校の管理下」とは、授業中だけでなく、校外学習、修学旅行、運動会などの学校行事や生徒会活動、部活動等の課外指導、始業前や放課後などの休憩時間、登下校中などが含まれます。最近では、学校生活におけるいじめや体罰等により、子どもが精神疾患にかかったり、自死した場合にも利用されることがあります。

 

(3)時効があるので要注意

時効は2年間です。

医療費の請求に関しては、一般的には保護者から医療費等の資料を提供した上で2年以内に学校から請求する必要があるので、注意しなければなりません。また、病院の領収書等を保管しておくように注意しましょう。

障害見舞金の請求に関しては、負傷又は疾病の治った日の属する月の翌月10日の翌日(11日)から起算して2年の間に請求を行わなければなりません。

死亡見舞金の請求に関しては死亡した日の翌日から起算して2年以内に請求を行わなければなりません。

 

(4)学校を通じて請求する

基本的には、学校が、スポーツ振興センターに対して請求します。請求すればスポーツ振興センターの一定の審査を経て、災害共済給付を行うべきか否かが判断されます。

 

(5)調査を尽くし、支給が認められるための意見書を作成する
  • 調査

代理人として依頼を受ける場合には、まず当該事案において、スポーツ振興センターの支給要件に該当するものか否か、支給要件に該当するために必要な資料が存在するか否かの調査を尽します。具体的には、生徒や保護者が所有している資料、スマホ、パソコン等から確認することが出来る資料を前提に、学校に対して照会をかけたり、事情を知っている人に対する聴き取りを行います。

相談事案の場合にも、本人のスマホを調査し、LINEの履歴や検索履歴等を確認し、学校に対して必要な資料の取り寄せや照会を行いました。

 

  • 主治医への確認

スポーツ振興センターの審査において、主治医の意見が確認されますので、事前に主治医に怪我や病気の状態がどうなのか確認することが望ましいといえます。

相談事案の場合にも、亡くなった生徒は直前まで精神科医に通院していましたので、主治医との面談を行い、主治医には病気に関する意見書を作成してもらいました。

 

  • 意見書の作成

調査を踏まえて、事実関係を整理した上で、スポーツ振興センターの災害共済給付の支給要件に該当することを意見書に作成して、災害共済給付の請求書と一緒に意見書を提出します。

相談事案の場合にも、生徒の置かれた状況や人間関係を前提に事実関係を整理した上で、スポーツ振興センターの規程等に基づいて支給要件に該当することを意見書に記載しました。最終的に学校側も代理人の意見書に記載のとおりであるということを前提に、「学校の管理下」での死亡であることが認められ、死亡見舞金が支払われました。

 

3 まずはお気軽にご相談を

「学校」でいじめや体罰、そのほかのストレス等により精神障害にかかった場合、学校の事故により怪我を負った場合には、スポーツ振興センターに対して災害共済給付を請求することができます。

しかし、支給が認められるためには、資料や意見書等を綿密に準備しておく方が望ましいといえますので、請求できるかどうか分からないという方もまずはお気軽にご相談ください。