「南吹田地域地下水汚染」公害調停事件 地下水汚染の浄化を継続する公害調停が成立しました!
1 調停の成立
2020年12月28日、大阪府公害審査会で、南吹田地域地下水汚染の公害調停事件で、公害調停が成立しました。成立した調停の内容は、申請人であるAさん宅の地下室にわき出る汚染された地下水を、これまでどおり、相手方企業の負担での浄化を継続するというものです。Aさんの「ただ、きれいな水に戻して欲しい」という願いにかなう最高の解決でした。
2 事件の経過
1997年、Aさん宅の地下室内で湧水する地下水に環境基準を大幅に超えるシス1,2ジクロロエチレン(肝臓、腎臓や神経系統に障害をもたらすトリクロロエチレンの分解された有害物質)が検出されました。 2001年、吹田市と相手方企業及びAさんとの間の合意書により、相手方企業の負担で、Aさん宅の地下室に、湧水の圧送装置を設置して、相手方企業の浄化施設に送水し浄化することになりました。
他方、吹田市は、南吹田地域の大規模な地下水汚染の調査を続け、相手方企業に浄化汚染対策の協力を求めましたが、企業側は「因果関係が確認できない」との姿勢をとり続け、汚染浄化対策は進みませんでしたが、ようやく、2016年7月、吹田市と相手方企業との間で合意がなされ、2017年から2019年にかけて、1号~3号揚水井戸が設置され、汚染地下水を汲み上げて浄化する対策が実施されました。Aさん宅地下室の装置も、これまで、南吹田地域の汚染浄化という同じ役割を果たしてきたものといえます。
ところが、2018年9月、相手方企業は、吹田市に対して、Aさん宅の地下水浄化に関する合意書を更新しないと通告し、これを受けて吹田市は、2019年3月、Aさんに、浄化設備の撤去を通告してきました。しかし、浄化装置の稼働を停止すると、現在でもクロロエチレンが環境基準の60~100倍という汚染された湧水がAさん宅の地下室に溜まったままの状態となってしまいます。そこで、Aさん一家は、2019年9月、吹田市と相手方企業に対して、浄化措置の継続を求めて大阪府公害審査会に公害調停を申し立てたのです。
3 さいごに
公害調停申立は、マスコミにも取り上げられました。そして、公害審査会での8回の期日を経て相手方企業、吹田市の理解を得ることができ、地下水汚染が一定基準以下になるまで浄化措置を継続するという内容の調停が成立したのです。これからも1号~3号の揚水井戸とAさん宅地下室の浄化装置の4つで南吹田の地下水汚染の浄化が進められることになったのです。
一市民が大企業と自治体を相手にする公害調停を申し立てることは大変勇気がいることです。Aさんの場合は、自らの利益のためというより地下室の浄化装置は、2001年から現在まで、南吹田地域全体の地下水汚染浄化ための役割を果たしてきたのに、一方的に打ちきるのは理不尽だという思いがありました。地下水汚染はいったん生じてしまうとその浄化には相当の年限、コストがかかります。これからも、地下水汚染の浄化を行政や企業任せにせず、安全な基準以下になるまで、市民が息長く監視していくことが大切です。
南吹田地域の地下水汚染の状況については、吹田市のHPにおいても詳しく紹介されています。
(あすなろ法律事務所の杉田峻介弁護士、当事務所の鎌田幸夫、西川翔大弁護士が担当しました。)
【画像はMBSニュースで報じられたAさん宅の地下に設置された浄化装置です】