「吹田市市民課業務の民間委託」について中止を求める意見書の提出をしました。
当事務所の弁護士が意見作成・賛同人となり、吹田市の市民課業務の民間委託につき中止を求める意見書を吹田市長と吹田市議会議長宛に提出しました。
意見書では、様々な問題点から中止を求めています。(以下抜粋)
「◆個人情報の問題
市民課業務は、住民の高度な個人情報を直接取り扱うものばかりである。今般の計画されている市民課業務委託では、民間業者が市役所のシステム端末を自ら操作して戸籍や住民登録の情報そのものを閲覧することが予定されており、個人情報の漏えいや流出等の問題が乗じる危険性が確実に高まる。
インターネットを通じて、全世界に流通・拡散し、しかも容易には消去できないことから、住民に回復し難い損害が発生して取り返しのつかない事態が生じる危険がる。
民間委託を実施すると住民の多岐にわたる高度の個人情報の保護が十分に図られない可能性がある。
◆偽装請負の問題
自治体の窓口業務を民間委託する場合、当該業務につき自治体職員が常駐し業務遂行について適切な対応を求められるにも関わらず、自治体職員が受託事業者の労働者を直接指揮命令して対応できないというジレンマに陥る。
窓口業務は、公権力の行使にかかる自治体独自の業務である。現実には、窓口業務とバックヤード業務は渾然一体となって進行するのであり、とりわけ疑義照会に関する検討・判断は自治体職員が行わざるを得ないが、受託事業者の労働者が、自治体職員に判断を仰いだり、自治体職員の判断事項を申請者に伝達したりなどすることは明らかな指揮命令行為であり、違法である。
今般の計画されている市民課業務の民間委託の場合には、先例事項と比較しても、偽装請負となる危険性は格段に高い。
◆住民サービス低下の問題
先行して窓口業務を民間委託した他市においては、従来よりも待ち時間は長くなり、市民からの苦情が殺到している。
市民が行政サービスに求めるものは、迅速さだけではない。正確さや法令を遵守した適正さこそがまず第一に求められているものであろう。
市民課業務を民間事業者に委託することによって、業務上のノウハウや知識は職員間で継承されなくなり、民間業者に流出してしまうことになる。
その結果、自治体職員としての専門性は失われ、委託先の民間事業者が適切に業務を遂行しているかどうかを監督・評価することすらできなくなっていくおそれもある。
労働者は次々と入れ替わっていくことも想定される。民間事業者への委託によって、行政サービスの継続性や永続性は大きく損なわれることになる。
一部の民間事業者による寡占化が進むにつれて、委託料は漸増していくであろうことは容易に予想される。
市民課業務を民間委託するという計画には、様々な問題が山積しているのであるから、ただちに中止されるべきである」