あらためて、B型肝炎訴訟の話。
1.はじめに~B型肝炎訴訟とは
B型肝炎訴訟をご存じでしょうか。
かつて、予防接種の際には、注射針、または注射筒の使い回しが横行していました。昔の予防接種の様子を映像で見ると、ずらっと並んだ子ども達が、1本の注射器で次々と接種されていく様子が映されています。このような使い回しにより、免疫力の弱い満7歳未満の時期に受けた予防接種の際にウイルスが体内に入り、B型肝炎に持続感染してしまう、といったことが起きていたのです。B型肝炎に感染すると、慢性肝炎、肝硬変、肝がんになることもあります。
昭和生まれであれば、誰もが被害者になる可能性がありました。
2.B型肝炎特別措置法の制定
2012年1月より「B型肝炎特別措置法」が施行され、予防接種によってB型肝炎に感染した方については、一定の要件の下、病態に応じた給付金が受け取れるようになりました。
この給付金を受け取るためには、訴訟手続が必要となります。私が所属する「B型肝炎訴訟大阪弁護団」においても訴訟手続を行っており、既に約4000名の方が当弁護団を通じて大阪地裁に提訴しています。
3.大阪弁護団の特色について
「B型肝炎訴訟大阪弁護団」は、全国B型肝炎訴訟弁護団の構成弁護団であり、2011年に国と基本合意を取り交わした弁護団です。この基本合意が元になり、上記の「B型肝炎特別措置法」が制定、施行されました。
大阪弁護団だけで約4000名、全国弁護団の合計では1万5000名以上の訴訟手続を取り扱い、訴訟実務に精通している弁護団であると自負しています。また、基本合意の前から国と協議を重ね、救済の範囲が広がるよう、尽力してきました。この成果も着実に出始めています。
さらに、肝炎患者の方々が安心して生活できる社会になるためには、治療体制の確立、医療費の助成、新薬の開発、偏見差別の防止など、国や地方公共団体の施策が必要となります。当弁護団では、これらの対策(「恒久対策」)の実現に向け、近畿圏の各地域において、行政機関、医療機関との協議など種々の活動を行うとともに、各地の患者会とも連携して、医療講演会の開催や啓発活動に取り組んでいます。
さらに、次世代にも予防接種被害の実態を知ってもらうため、大学をはじめとする教育機関での患者講義の実施にも力を入れており、好評をいただいています。
4.おわりに
B型肝炎は、ウイルスが体内にいるだけでは自覚症状がなく、感染判明と同時にがんが発覚、といった事例すらあります。全国に120万人の患者がいるという推計もあります。昭和生まれの方は、一度は検査されることをお勧めします。
また、患者さんやそのご遺族の方は、提訴の可否や進め方について、是非ご相談いただければと思います。