コロナ禍による解雇が増えています
報道によれば、新型コロナウイルス関連の解雇・雇止めが急増しているようです。
解雇・雇い止め1万人超え、コロナの影響 厚労省集計 (朝日新聞)
しかし、コロナ禍だからといって、安易な解雇が許されるわけではありません。
法律上は、解雇するためには、「客観的に合理的な理由」が必要であり、「社会通念上相当である」と認められることが必要です(労働契約法16条)。
会社の経営状態を理由とする解雇については、「整理解雇」と呼ばれます。
整理解雇は、労働者には責任がなく、経営者側の都合によって決められるものですので、
「客観的に合理的な理由」や、「社会通念上相当である」と認められることについては、
厳格に判断されなければなりません。
これまでの判例・学説上では、「整理解雇の4要件(要素)」によって、判断されてきました。
① 人員削減の必要性があること
② 解雇を回避するための努力が尽くされていること
③ 解雇される者の選定基準及び選定が合理的であること
④ 事前に使用者が解雇される者へ説明・協議を尽くしていること
コロナ禍を理由にした整理解雇については、以下の点に留意するべきだろうと考えられます。
① → コロナ禍で一時的に売り上げが大きく落ち込んだとしても、
今後、急速に回復していく可能性もあります。
一時的な売上減少だけを理由とした安易な解雇は許されません。
② → 国は巨額の予算をつぎ込んで、雇用調整助成金や持続化給付金など様々な支援策を打ち出しています。
納税の猶予や、無利子融資の拡充なども実施されています。
さらには、家賃の支援策も実施される予定です。
自治体レベルでも、様々な支援策が実施されています。
これらの緊急支援策は、企業とそこで働く従業員らを守るために、私たちの税金を使って、実施されているものです。
したがって、まずは、これら緊急支援策を最大限に活用することが、解雇回避のための努力として要請されているといえるでしょう。
これら緊急支援策を活用しないままに安易に解雇することは許されません。
③ → 解雇の対象者を、経営者が恣意的に選ぶことは許されません。
誰もが納得できる公正な基準を策定し、その基準に照らして対象者を選定しなければなりません。
④ → 解雇の対象者には、コロナ禍が経営にどのような影響を及ぼしたのか、
ウィズコロナ、アフターコロナにどのように対処しようとしているのか等、
対象者に対して十分に説明しなければならないでしょう。
社会全体でコロナ禍を乗り越えようとしているときに、
コロナ禍を理由にして安易に解雇してしまうことは、
社会通念上相当であると認めることはできません。
コロナに便乗した、コロナを口実にした、不当解雇に泣き寝入りしないでください。
新型コロナウイルスに関連した労働問題については、日本労働弁護団のホームページもご参照ください。