ヒゲの徳さんのたわごと① ~情報公開請求訴訟の効用~
時の総理が「桜を見る会」事件を始め、その職権を濫用して国政を私物化していることについて、疑惑の究明を求める市民から様々な刑事告発がなされました。告発事件の捜査や起訴など検察の対応に影響を与えるべく総理を忖度してくれる検事総長を選びたい、そんな想いからの天の声が、検察官の定年延長や黒川検事長の勤務延長の閣議決定を生み出したのではないか。この疑惑の真相を解明したいというのが黒川検事長の勤務延長の閣議決定をめぐる情報公開請求訴訟です。
現在大阪地方裁判所第7民事部で審理が進んでいます。
驚くべきことに、情報公開法で開示された法務省の作成した検事の定年延長に関する国公法の解釈変更を認めた文書には全く日付がなく、また誰が作成したのかも全く不明の文書なのです。本当に検察の本来の仕事上の必要があり、法務省や検察庁内で黒川検事長の勤務延長の必要性を議論して、省内・庁内で正規に決定したうえでの閣議決定であれば、こんなずさんな文書しか残っていないはずはありません。やはり天の声に引きずられてまともな手続きを経ずに、黒川検事長の勤務延長の閣議決定に至ったことの表れではではないでしょうか。
本来このような国政上の重大な疑惑については、主権者である国民の代表である国会がその権限を行使して、総理の国政私物化の実態を解明すべきことです。ところが国会は政権与党の多数支配の下では容易には追求は進みません。野党や世論に押されながらも、ずるずると幕引きに動くのが政権与党です。
こんな時に、威力を発揮するのが情報公開請求訴訟です。情報公開請求は市民一人ひとりの権利なので、政治的多数とは無関係に市民一人でも行使できるのです。そして市民一人でも、おかしな情報公開や非開示について、原告となって裁判所で主導的に真相の解明に向けて訴訟活動を展開することもできます。
地方自治体での首長らの権限濫用については、公金の支出等の不法・違法を正すために市民一人ひとりに監査請求権が認められています。そして不当な監査結果については、一人でも住民訴訟を起こすことができます。国政にはそのようなシステムはありませんが、情報公開請求訴訟が実際的には同じような機能をもっていることになります。
すなわち、地方行政については、地方議会とは独自に市民が一人でも公金の支出等の監査を通じて地方行政のゆがみを監視することができるのに、国政ではそのような制度が欠けているところ、情報公開請求訴訟がその役割を代替してくれるのです。
確かに、刑事告発を通じた国政の監視も市民一人でも可能ですが、刑事問題となるような場合に限られますし、原告としての活動とは異なり結局は検察の活動に任せるほかなく、その意味で受動的でしかないことになります。
情報公開請求訴訟のこのような役割・効用の理解がもっと広がることを期待してたわごととします。