内閣官房機密費情報公開請求訴訟、12月22日に最高裁で弁論
内閣官房は,内閣のその時々の重要な政策課題の実現のため,非公式の交渉や協力依頼に際して関係者の合意や協力を得たり,また有益な情報を得るために支払われる対価等として,毎月約1億円もの「内閣官房報償費(機密費)」を国庫から取得し,使用しています。この官房機密費は,具体的な使途が特定されない段階で国の会計から支出が完了し,その後は取扱責任者である内閣官房長官の政治的な判断で自由に使用されています。
毎月(毎年,ではありません)1億円もの国民の税金が使用されているにもかかわらず,その使途や支出の相手方はもちろんのこと,支出時期や支出金額,費目等の情報一切について,国民に開示されてきませんでした。ある筋からの情報では,国会対策(野党の買収資金等)やマスコミ対策等,政治をカネで歪めるような支出があるのではないかとも言われてきましたが,情報公開が全くなされないため,不適正な支出の有無について,国民が監視・検証することすらできませんでした。そこで今から10年以上前の2007年,政治資金オンブズマンのメンバーが原告となり,内閣官房機密費の支出関連文書の情報公開を求める訴訟を提起したのです。当事務所からは徳井弁護士と私が弁護団として加わりました。
裁判で争われた第1次訴訟(安倍晋三官房長官分),第2次訴訟(河村建夫官房長官分),第3次訴訟(菅義偉官房長官分)について,これまで3件の地裁判決と2件の高裁判決では,支出の相手方が特定されない文書について開示を命じる一部勝訴判決が下されました。これまで国が支出関係文書一切が不開示とされてきた「ブラックボックス」ともいえる官房機密費の支出実態について風穴を空ける判決が確立しようとしていたのです。
しかし,2015年10月に出された第3次訴訟の高裁判決では,一転して,支出の相手方等が特定されない文書であっても,開示されるとその時期や金額から使途を一定程度推定でき,内閣の事務の遂行に支障が生じるとして,全面的に非開示とする驚くべき判決が出されてしまいました。
このように結論が大きく分かれた高裁判決について,原告と国の双方が最高裁に上告を行っていたところ,2017年12月22日,最高裁において,高裁判決から結論を変更するのに必要な手続である「弁論」が開かれることになりました。2018年早々には,この問題について初めての最高裁の判決が下され,判断が統一されます。
人権の砦と言われる最高裁が,税金の支出について国民の監視・チェックを重視するのか,それとも「国家」の「機密」を重視するのか,その判断にぜひご注目ください。