内閣官房機密費情報公開請求訴訟で大阪高等裁判所不当判決~最高裁での攻防へ~
1.はじめに
内閣官房は、内閣のその時々の重要な政策課題の実現のために、非公式の交渉や協力依頼に際して関係者の合意や協力を得るため、また有益な情報を得るために支払われる対価等として、毎月1億円余の「内閣官房報償費」なる金員を国庫より取得・使用しています。この金は、具体的な使途が特定されない段階で国の会計からの支出が完了し、その後は、取扱責任者である内閣官房長官の判断で支払が行われ、その使用は内閣官房長官という政治家による政治的な判断の下で決定されます。
しかし、その使途に関する情報は、公金・税金であるにもかかわらず市民には一切開示されてきませんでした。したがって野党の買収資金等、政治を金で歪めるような支出が無いのか、そのことの検証には一定の範囲では支出に関する情報の開示が必要でないかとの観点から、情報公開請求訴訟の取り組みが行われてきたのです。
2.これまでの成果
これまでに安倍、河村、菅の3人の官房長官時代の支出関係文書の開示を求めて争われてきましたが、国による全ての支出関係書類の開示の拒否に対して、大阪地裁が一定の限られた範囲ではありますが支出の相手方等の特定に至らないような支出関係文書についてはその開示を命じる判決をなし、また安倍・河村官房長官時代のものについては大阪高裁も大阪地裁と同様の一部開示を命じる判決をなしました。
具体的には、支出の相手方や支出の具体的目的、日時・金額に関する記載のない、内閣官房長官が自ら支出・管理している「政策推進費」の受払簿や「出納管理簿」の一部(内閣官房報償費の支出を月ごとにまとめた上で当該年度ごとにおける支出全体を一覧できる)、あるいは会計検査院に提出している「報償費支払明細書」等であり、領収書類については一切開示は認められていません。
市民の知る権利や政治を金で歪めることを防止する観点からの開示の範囲としては極めて不十分ではありますが、それでも国による全てを不開示として闇に葬ろうとする姿勢に対する批判としては、非常に画期的な判決が積み重ねられてきていたのです。
3.大阪高裁の不当判決と最高裁での攻防
ところが、2016年10月6日、大阪高裁は、菅官房長官時代の支出関係文書について、これまでの大阪地裁、大阪高裁の一部開示を命じる判決を覆し、支出関係文書の開示をすべて否定する不当判決をなしました。すなわち、官房機密費の支出関係文書の開示は、それ自身では具体的に相手方や使途を特定できずとも、内閣の動向をめぐる各種情報の分析や第三者による不正な工作等を通じて、その特定が可能になるおそれがあり、ひいては内閣の政策の遂行に支障を及ぼすおそれがあるというのです。
しかし、このような解釈は不開示の範囲を無制限に拡大するもので情報公開法の趣旨を没却し、市民の知る権利と国政・税金の使い方への監視の道を閉ざすもので、到底許されないものです。
一部開示を命じた大阪高裁判決に対しては国も最高裁に上告をしており、今回の不当判決については、我々の方が上告しています。すなわち二つの高裁判決が全く異なる結論となっているため、最高裁が弁論を開いて結論を統一する判決を下すことは間違いない情勢であり、最高裁での審理が、重大な局面を迎えているところです。
みなさんの注目を期待するものです。