安倍内閣の「働き方改革」の真偽を問う
電通事件の高橋まつりさんの過労自殺は、日本社会・企業のの長時間労働がいかに根深く、異常であるかを示しました。日本人はどうして死ぬまで働くのかという海外からの反響もあります。安部内閣も、世論を受けて、長時間労働の規制は働き方改革の重要な課題せざる得ませんでした。もっとも、安倍内閣は、働き方改革を成長戦略、生産性向上の一環として位置づけていることを忘れてはなりません。
長時間労働を規制して、過労死ゼロ社会を目指すのであれば,これまで青天井であった残業の上限を法律に明記することが絶対必要です。ところが、連合と経団連の労使協議、そして安倍首相の裁定の結果として3月17日、政労使提案がなされましたが、その内容はどうでしょうか。
36協定を締結することを前提に、法律で月45時間、年360時間という上限を定めるとはしていますが、重大な特例があります。
それは、①繁忙期には、月平均60時間、年間720時間、 ②極めて忙しい月の上限は100時間「未満」というものです。報道では100時間を巡って労使の攻防があったようですが、100時間未満という1ヶ月の過労死ラインをぎりぎりこえなければよいというところで落ち着けようとしているのです。 また、休日労働は上限規制の対象外とされており、休日労働と合計すると960時間まで働かすことができる制度設計になっています。また、今日の日本社会では、特例が原則になってしまうおそれも十分あります。
過労死家族の会などから、「これでは過労死法認(放任)法案だ」という強い批判が出ています。高橋まつりさんのお母さん、幸美さんも「人間の生命健康に関わるルールに特例が認められてよいわけがありません。繁忙期であるとか、経済・産業発展のために人間の命が奪われてよいはずがありません。」とのコメントを寄せています。
まとまな働き方改革の実現のためには、少なくとも月45時間という上限を法律化して例外を認めないというしっかりした規制をすることが必要です。また、上限規制を実効性があるものにするための使用者の適正な労働時間把握義務、記録保存の義務付けをすることが不可欠です。
今、進められている働き方改革の問題点、不十分な点を批判し、労働者の生命健康を守り、生活時間を確保する改革に近づける運動が是非必要です。