帝産湖南交通「しんぶん赤旗」記事・懲戒処分事件で勝訴!
当事務所の鎌田幸夫と安原邦博が担当している帝産湖南交通「しんぶん赤旗」記事・懲戒処分事件について、本日(2018年7月2日)、大阪高等裁判所にて懲戒処分を違法、無効とする勝訴判決が言い渡され、原告と弁護団から声明を出しましたので、ご紹介いたします。
帝産湖南交通「しんぶん赤旗」記事・懲戒処分事件(大阪高裁平29年(ネ)第1453号)
【大阪高等裁判所判決を受けての声明】
滋賀県の路線バス会社帝産湖南交通(株)のバス運転手であり、帝産湖南交通労働組合の委員長であった原告が、2014年6月、バス運転手の長時間労働の実態及びパート労働者の労働条件改善の取組みについて「しんぶん赤旗」の取材を受け、それが同年8月22日に同紙上で記事となったところ、会社は、記事に誤りがあり信用を毀損するなどとして、2015年2月に原告に対し出勤停止10日の処分を断行したが、大阪高等裁判所第5民事部(藤下健裁判長)は、本日の判決において、かかる懲戒処分を違法、無効と判断した。
会社が懲戒理由としたのは、記事中の、
① 「帝産湖南交通労働組合は、パート運転者の不満をとりあげて会社と交渉しました。しかし、会社は、非組合員の問題だといって組合との交渉に応じませんでした。」との部分、並びに、
②「正社員の運転者が『君しか走るものがおらんのや』と会社に言われ、1日に早い時間帯と遅い時間帯など2人分の勤務をかけもちするよう迫られました。断り切れずに、3日間連続の長時間労働をした翌日に、心筋梗塞で入院しました。」という部分であった。
2017年4月13日、大津地方裁判所(山本善彦裁判長)は、記事①は真実としたものの、記事②については、「3日間連続」の長時間労働との点、及び、「当該運転手の心筋梗塞は長時間労働が原因であるとの点」が、虚偽であって会社の信用を毀損し懲戒処分は
相当である、などとの不当判決を言い渡した。
しかし、本日言い渡された大阪高裁判決は、記事①及び②について、双方ともその掲載ないしそれに係る情報提供行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出たものであって、①は真実、②についても核心部分で真実であることが証明されているとして、原告の情報提供行為が懲戒事由に該当せず、懲戒処分の違法、無効を認めて地裁判決を取り消したのである。
バス運転手の長時間労働の是正とそれによる労働者の健康・生命の保護及び乗客たちの安全確保は、喫緊の課題である。ところが、6月29日にはまやかしの「働き方改革」法が強行採決され、運転業務の規制は5年間先送りされるなど、長時間労働の是正は一向に進んでいない。かかる状況のもと、労働者、労働組合が、職場の長時間労働の実態を社会に広く訴え、会社に是正を迫ることは必要不可欠であり、これは、正当な組合活動、表現の自由として保護され、国民の知る権利を実現するものである。
原告及び支援の労働組合は、運転業務の長時間労働を是正するための取組みを今後も継続して強めていく所存である。
2018年7月2日
帝産湖南交通「しんぶん赤旗」記事・懲戒処分事件 原告・原告代理人