建設アスベスト訴訟 大阪高裁ダブル判決の意義と全面解決に向けて
2018年8月31日(京都1陣訴訟),9月20日(大阪1陣訴訟),建設アスベスト訴訟大阪高裁ダブル判決で,連続して原告側全面勝訴判決を勝ち取りました。
わが国では,輸入量の7~8割という大量のアスベストが,吹付け,ボード,スレート等の建材に使用されてきました。そのため,大工,電工,内装工,解体工,塗装工等,あらゆる建築作業者に,肺がんや中皮腫,石綿肺等の深刻なアスベスト被害が多発しています。その中には,労働者だけでなく,一人親方や個人事業主等も多数含まれています。建材メーカーは,アスベストの有害性を知りながら,それを警告することなく,逆に安全性をアピールして,大量のアスベスト建材を製造販売し,利益を上げてきました。また国は,何の規制も行わないばかりか,建材メーカーの要請を受けてアスベスト建材を耐火構造等に指定・認定し,使用を促進しました。今後も,アスベスト建材を使った建物の解体・改修や,震災時のがれき処理などの際に,新たなアスベスト被害が発生する危険性があります。被害者の全面的な救済と被害根絶のため,全国で,建材メーカーと国の責任を追及しているのが,建設アスベスト訴訟です。
大阪高裁ダブル判決で,国はついに10連敗,建材メーカーの責任を認める判決も5つになりました。一人親方等については,労働安全衛生法の保護対象ではないとして,これまで国の責任が認められてきませんでしたが,2018年3月14日の東京高裁判決に引き続き,今回の大阪高裁ダブル判決でも責任が認められました。一人親方等が労働者と同様に建築現場において就労し建設作業でアスベストを吸い込み病気を発症した実態を直視したものであり,一人親方等の責任を認める流れは確かなものになりました。さらに,大阪1陣訴訟の高裁判決では,根本的な対策である製造使用禁止の責任も認められ,さらに国が住宅政策でアスベスト建材の使用を促進してきた事実を重視して建設訴訟で初めて国の責任を3分の1から2分の1に引き上げました。判決を重ねる度に,国や建材メーカーの責任が重く判断されています。
首都圏で初めて建設アスベスト訴訟が提起されて,すでに10年が経ちます。原告被害者のうち7割もの方が解決をみずに亡くなっています。大阪高裁の両裁判所はそのような現実を目の当たりにし,解決の必要性を重く受けとめ,判決前に和解の打診・勧告まで行いました。しかし国・建材メーカーはこれを拒否し,争いを続けました。今回のダブル判決は,負け続けながら解決を拒否する国や建材メーカーに対し,裁判所の厳しいメッセージが込められたものです。
原告らは,被害者が裁判を起こさなくても救済が受けられる補償基金制度の創設を求めています。この間の建材メーカーとの交渉の中では,国から働きかけがあれば補償基金創設に協力を検討するという企業が増えてきています。やはり最も大事なことは,国を動かすことです。
国を動かす上で,やはりまだ埋もれた被害者がたくさんいることを世論に問うていくことが重要です。2陣訴訟も各地で継続しています。まだまだ全国に被害者がたくさんいらっしゃると思います。いつでも当事務所・弁護団までご相談ください。
大阪アスベスト弁護団(無料相談申込)
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2018年9月20日 建設アスベスト大阪1陣訴訟・大阪高裁判決