生活保護と親族の扶養義務
お笑い芸人の家族が生活保護を受けていたことについてマスコミやネット上で大バッシングが起きています。他方で、この問題を取り上げた自民党の国会議員に対する逆バッシングも起きています。 バッシングと逆バッシング、どちらも冷静な議論じゃありません。
今の世の中、みんなが余裕をなくしてしまっていませんか?
朝早くから必死で働いて、夜遅くにやっと帰宅して、ご飯を食べてお風呂に入って、ほっと一息ついてテレビをつけたら「売れっ子芸人の家族が生活保護!?」とかやってると、思わず、「甘えるな!」と思ってしまいますよね。
でも、そうやって、一般庶民の感情・劣情を煽って、対立させて、分断するという手法が「ポピュリズム」の政治手法です。小泉純一郎さんや橋下徹さんが用いる「単純化」、「ワンフレーズ」、「二項対立」はそのテクニックです。
今回のお笑い芸人の生活保護問題は、冷静に考えてみれば、「扶養義務」の問題です。子どもが親を「扶養」しなければならない法的な「義務」があるのかどうかです。
学説上は、夫婦がお互いに扶養する場合と、親が未成年の子どもを扶養する場合については、強い扶養義務があるとされています。別居している夫婦間での「婚姻費用」や、離婚した後の子どもに対する「養育費」については、相手が支払わない時には家庭裁判所で調停や審判で支払いを求めることができます。
他方、それ以外の親族間の場合(例えば、兄弟同士の扶養とか、子どもが親を扶養するとか)については、自分自身の生活を成り立たせた上でなお余裕があれば、余裕の範囲で援助すればよいとされています。
ちなみに、諸外国では、夫婦間と未成年の子どもに対してだけ扶養義務を課している国がほとんどです。兄弟同士でとか、子どもが親を扶養するといったことを法律で義務づけている国はほとんどありません。日本では、まだまだ古い「イエ制度」の名残があるということでしょうか。
また、生活保護法では、親族間の扶養は、生活保護の「要件」(=前提条件)とはされていません。生活保護を受給している方の親族に余裕があることがわかった場合には、後から役所がその親族に返還を請求することができるという仕組みになっています(生活保護法77条)。
詳しくは、「生活保護問題対策全国会議」が発表している見解をご覧下さい(長文ですが!)
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-36.html
余裕をなくしてついバッシングしてしまう社会の雰囲気を変えるためには、働き過ぎを規制することや、低賃金で不安定な働き方を改めてディーセント・ワークを実現することも大切です。