相続法の改正についての解説⑤
2019.05.20
徳井義幸
Q 前回までは自筆遺言に関する改正点の説明をしてもらいました。今回から配偶者の保護の強化に関する改正点の説明をして欲しいと思います。
A そうですね。この点の改正点は影響が大きそうですね。まずどのような改正がなされたのかを概観してみましょう。一つは、配偶者居住権という権利を創設したことです。そしてもう一つは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間での居住用不動産の贈与等についての優遇措置を創設したことです。
Q それではまず一つ目の、配偶者居住権というのはどんな権利でしょうか。
A これは配偶者が相方の死亡時に相方所有の建物に住んでいた場合に、その配偶者が遺産分割により、終身、又は一定期間その建物にタダで住み続けることの出来る権利です。なおこの配偶者居住権は、遺言で配偶者に与えることも出来ますよ。
Q どういう意味で、配偶者の保護が強化されたことになるんでしょうかね。
A 例えばですね、相続人が妻と子一人の場合ですが、遺言で格別の取り決めがなければ、死んだ夫名義の自宅は相続によって妻と子がそれぞれ2分の1ずつの権利を持つことになります。もし妻と子が対立すると、子が母親に家の2分の1の権利を換金するように迫り妻の居住が危うくなる可能性がありますね。そんなことを防ごうと言うことです。