私立大学における教職員の大量解雇を許さない闘い~奈良学園大学事件~
奈良市内にある学校法人奈良学園において、学部の学生の募集停止を理由に雇い止め、解雇された教員8名が、平成29年4月13日、奈良県労働委員会に不当労働行為救済申立てを行い、4月26日、奈良地裁に解雇無効・地位確認の裁判を提訴しました。
法人は、過去、関西科学大学申請の際に虚偽申請を行い、申請の取り下げを余儀なくされるなどの不祥事があり、大学の再建計画として、平成26年4月、奈良産業大学(当時)に人間教育学部・保健医療学部・現代社会学部を設置し、既存のビジネス学部・情報学部は閉鎖する方針を立てました。その際、教授会で後継学部を設置できなければ、ビジネス学部・情報学部は存続させるという付帯決議がなされました。ところが、法人は、社会学部の設置申請が杜撰であったため、申請を取下げざるを得なくなりましたが、前記の付帯決議を削除し、ビジネス学部情報学部の教員を人員整理する方針に急遽転換したのです。当時の事務局長は、大学教員に対して警備員としてなら雇ってやるなどと発言しました。
当時、大学には組合がありましたが、人員整理方針に同意したため、原告らが、教職員の雇用を守り、大学を再建すること、説明責任や相応の責任を果たすことなく、大学を支えていた教職員らを退職に追い込もうとする理事会の姿勢を糺すために新たに教職員組合を結成し、奈良労連一般労組にも加入し、法人と団体交渉を続けました。
法人は、雇用確保を求め、理事会の責任追及をする教職員組合を嫌悪しました。そして、労働委員会における「組合員の雇用継続・転退職等の具体的な処遇について、誠実に協議する」というあっせん合意に反して本件解雇、雇い止めを強行してきたのです。法人は、現代社会学部設置の計画が頓挫した後も、社会科学系の学部である「第三の学部」の設置を模索しており、これを一方的に凍結して原告らに対して本件解雇・雇止めを行い、本件解雇後に再び「第三の学部」の設置を検討し始めています。このことは、本件解雇が組合員を法人から排除する目的であったことを端的に示しています。また、法人は、本件解雇雇止め後に、原告らに、平成29年3月下旬、非常勤講師として出講することを打診していますが、これは原告らを解雇・雇止めする必要性がないことを示しています。また、法人は、労働委員会に救済申立をするような人とは非常勤の契約はしたくないなどと組合嫌悪の発言をしています(その後撤回し謝罪しています)。
杜撰な経営を行ってきた経営者の責任を不問として、これまで法人の発展に貢献してきた組合員の雇用が奪うという背信的な解雇が許されてはなりません。奈良での大型争議になりますが、奈良の佐藤、山下弁護士と当事務所の中西、鎌田ら大阪の民法協の弁護士が弁護団を組んでいます。御支援のほどをよろしくお願いします。