起こしてもない事故の虚偽申請を強要!土下座謝罪まで・・・大阪地裁で勝利和解!~西濃運輸長時間労働パワハラ事件~
原告の男性は,平成18年に大手運送会社「西濃運輸」に中途入社した長距離のトラック運転手でした。
昼すぎに出勤し,積み込みをした上で夜に出発,高速道路で夜通し関東まで走行して朝に到着して,荷降ろし。業務終了後,関東の支店で若干の仮眠をとって,またその日の昼すぎから積み込みを開始し,夜に出発,高速道路で夜通し大阪まで走行して戻り,朝に到着して荷下ろし。そのような過酷な業務に長年従事してきました。高速道路での運転は事故を起こすと死に至ることから緊張を強いられる毎日。運送業界では告示で拘束時間は最大一日16時間までと決められているのですが,全く守られていません。月の時間外労働は平均で120時間にも及びました。
そのような過酷な業務を行う中,信じがたいことが起こりました。平成23年6月,原告が高速道路を関東に向かって走行中,後方を走行する車両に煽られ,無視をしていると,しばらくして通報があったとして警察に止められました。原告が降りると先ほどの煽っていた車両の運転手が「西濃運輸のトラックに当て逃げをされた」と主張しているというのです。原告は警察に「当て逃げなどしていない」と説明をしていると,上司から電話があり,「相手車両が西濃運輸の得意先だから事故を認めろ」と強要されたのです。原告は耳を疑い,上司に事故など起こしていないと何度も説明しましたが,「それなら会社を辞めろ」と取り付く島がありません。仕方なく,原告は警察に「事故を起こしました」と,虚偽の申告をすることになりました。
その後,原告が大阪の支店に戻ると,事故を起こしたということで始末書を書かされ,上司に土下座をして謝らされ,「反省出勤」として3日間炎天下で草むしりを無給でさせられました。さらに相手方への弁償金を支払えと迫られ,さらに「草むしりで休んでたから」との理由で通常より過密なスケジュールでの就労を強いられるようになりました。
1か月後,原告は心身の疲労でフラフラになって大阪の支店に戻ったところ,上司から「何をやってたんや!」,「そんなことだから事故を起こすんや!」と叱責され,ついに緊張の糸が切れました。病院を受診したところ重度のうつ病と診断され,その後長期休職となりました。労災認定を受けましたが,平成26年末には退職に追い込まれました。この出来事から5年以上経った現在でも,原告はほとんど家で臥床する生活です。
平成26年6月,原告は大阪地裁に対し,上司2名と会社を被告として,パワハラと長時間労働の責任を明らかにすべく提訴しました。2年半の審理を経て,平成29年2月12日,上司2名と西濃運輸が責任を認めて原告に謝罪。2600万円を支払うという和解が成立しました。
労働者を物のように扱い使いたおす「ブラック企業」という言葉が定着していますが,特に運送業界では信じがたい長時間労働が蔓延しています。現在,「働き方改革」で長時間労働に規制がされようとしていますが,電通事件や本件のような悲惨な事例を防ぎ,労働者の命と健康を守るため,実効性のある規制が求められます。